応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌
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【総説:―受賞論文―】 植物細胞壁構成成分の水熱処理技術の開発と抽出成分の酵素分解
天野 良彦
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2017 年 7 巻 1 号 p. 2-9

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抄録

本研究で開発した連続式の水熱反応装置は,常温・常圧でスラリー状の試料を投入し,高温・高圧の水処理を経て,再び常温・常圧の状態に戻して排出するものである.この水熱反応装置は水を完全な密閉容器内でガス層のない液密状態で反応させるところに特徴がある.このような条件では,水自体が触媒活性を有し,なおかつ誘電率が低いことから通常の水では溶解しない成分の抽出が可能となる.この性質を活かして,植物細胞壁の成分のうち主にヘミセルロースを可溶化させ,リグノセルロースとの分離を可能とした.通常ヘミセルロースの抽出にはアルカリが用いられることが多いが,天然のヘミセルロースは多くのエステル基により修飾されているため,これらの多くは加水分解されてしまっていた.本研究では,エステル基をできるだけ天然に近い形で保持できる水熱反応条件を特定し,これまでにない構造の糖質を抽出することに成功した.これらの抽出成分をNMR で構造解析すると共に,酵素処理後にMALDI TOF-MS 分析を行い,水熱反応ではアセチル基やフェルラ酸などが保持された,重合度分布の広い画分が得られることを見出した.

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© 2017 一般社団法人 日本応用糖質科学会
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