応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌
Online ISSN : 2424-0990
Print ISSN : 2185-6427
ISSN-L : 2185-6427
【報文】 サツマイモ品種「こなみずき」澱粉製造におけるpH 調整が澱粉品質に与える影響
時村 金愛久米 隆志藤田 清貴北原 兼文
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 7 巻 1 号 p. 29-34

詳細
抄録

サツマイモ品種「こなみずき」の澱粉製造において,塊根磨砕物のpH を変えて調製した澱粉の白度や粘度特性等を測定し,pH 調整が澱粉の品質に与える影響を調査した.モデル実験では,「こなみずき」塊根を磨砕した磨砕物に水酸化カルシウム[Ca(OH)2] 飽和水溶液を添加してpH を6.4~9.0 の範囲で調整してから澱粉を調製した.無添加のpH 6.4 で調製した澱粉は白度が84.9 であるのに対して,弱アルカリ(pH 7.8~9.0) で調製した澱粉は白度が87.3~88.3 と向上した.一方,RVA による粘度上昇温度は58.4~59.9°C の範囲にあり,また澱粉ゲル(わらびもち) や澱粉糊液の付着性や粘弾性においても大きな変化はなく,pH 調整が澱粉の粘度特性や物性に与える影響は認められなかった.次に,澱粉製造工場における磨砕工程にpH 調整を適用した結果, 塊根磨砕後のpH を8.8 に調整して製造した澱粉は91.7 と高い白度の値を示した.また,磨砕工程でのpH 調整が澱粉の粘度特性に与える影響は小さく,澱粉白度が向上した澱粉はポリフェノール吸着量の目安となるアルカリ着色度の値も低かった.これらのことから,栽培環境のストレスによりポリフェノール含量が高まった「こなみずき」塊根であっても,磨砕工程のpH 調整によって澱粉へのポリフェノール吸着が抑制され澱粉白度を向上できることが明らかになった.

著者関連情報
© 2017 一般社団法人 日本応用糖質科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top