我々の研究室では非晶性米粉を生地に添加することで米粉のみで良好な製パンが可能になることと,熱とせん断を米粒に同時に印加し粉砕することで米粒内の澱粉を短時間かつ簡便に非晶化可能なことを明らかにした.本総説では,非晶性米粉添加時の生地の一軸伸長粘度測定と製パン実験および中圧ゲル濾過法,キャピラリー電気泳動法を用いて米澱粉の分子量分布測定,鎖長分布測定を行った研究について述べる.「非晶性米粉の添加による米粉生地の物性への効果」については非晶性米粉の添加により,生地を伸長した際に粘度が急激に増加する現象がみられることと生地の発泡率が向上することがわかった.この結果から小麦粉生地と同様に非晶性米粉の生地において,伸長時に生地が硬化するひずみ硬化性が発現し良好な製パンを実現していることを初めて明らかにした.「新規非晶化技術による米澱粉の分子構造への影響」については,加熱・せん断粉砕を行うことで米粒内のアミロペクチン分子鎖が重合度35以上において切断され低分子化することを初めて明らかにした.