2018 年 8 巻 3 号 p. 217-223
糖質は,細胞内において,ATP生産の源として,また,細胞や生体分子の構成要素として利用されるだけでなく,シグナルとなり伝達されることによって細胞増殖や代謝などの細胞生理が適切に制御調節される.ヒトでは,細胞外からの糖質の取り込みや細胞内シグナル伝達の不全は,がんや糖尿病などの重要疾患を引き起こす.筆者らは,細胞外環境に応じて細胞増殖を変化させる真核生物である出芽酵母を用いて,栄養伝達・細胞応答の制御調節に関わるメカニズムの解明に取り組んできた.本稿では,出芽酵母における,細胞外の糖質の取り込みから細胞内糖鎖の代謝分解に至るまでの分子機構について,これまでに得てきた知見を紹介する.具体的には,以下の2つの内容である.1)出芽酵母は,細胞外環境の栄養源の枯渇に応じて,細胞内のマンノシド糖鎖を活発に代謝分解することを見出し,その分子機構を明らかにした.2)出芽酵母の種々の遺伝子欠損株について,細胞内マンノシド糖鎖の代謝分解活性の変化を定量解析することによって,細胞外グルコースの効率的な取り込みと栄養応答に関わる新規の膜機能分子を同定した.