応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌
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【総説:応用糖質科学シンポジウム】 環状α-1,6-マルトシルマルトース(CMM)の認識および分解に重要なArthrobacter 属細菌由来CMM分解酵素の構造的特徴
河野 正樹荒川 孝俊太田 弘道森 哲也西本 友之牛尾 慎平伏信 進矢
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2019 年 9 巻 2 号 p. 103-112

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抄録

環状オリゴ糖はその名の通りいくつかの糖が環状に連なったオリゴ糖であり,pHや温度安定性に優れ,非還元性であることから,現在食品のみならず多くの分野で利用されている.環状α-1,6-マルトシルマルトース(CMM)は,四つのグルコースから構成される環状オリゴ糖の一種である.CMMは一般的なα-amylaseでは分解されないが,CMM hydrolase (CMMase)という特殊な酵素によって効率的に分解されることが明らかとなっていた.我々はCMMaseの基質フリーおよび複合体状態の立体構造をX線結晶構造解析により決定した.CMMaseはα-amylase関連酵素において一般的な三つのドメインから構成されるモノマー構造を有していたが,ダイマー構造はこれまで報告されていない非常にユニークな羽根状の全体構造であった.また,同じ糖質加水分解酵素ファミリー13のサブファミリー20に属しているネオプルラナーゼとの比較から,CMMaseはCMMがぴったりとはまるような基質結合ポケットとなっており,その形は三つの特徴的な領域によって支えられていることが明らかとなった.さらに,このCMM認識に重要な3領域を持つCMMaseホモログの遺伝子が,その他の多くの菌種のゲノムに存在していることが示唆された.

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© 2019 一般社団法人 日本応用糖質科学会
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