2019 年 9 巻 2 号 p. 113-120
化石資源への依存度を低下するため,世界各国で生物資源を活用した持続的なものづくりへの取組が加速する中で,我が国では,原料供給規模が小さい国内地域で適用できるような,小規模変換技術の開発が強く求められている.我が国における繊維質原料の糖化・発酵技術開発の歴史を振り返ると,戦後の木材化学工業技術,オイルショック対策の燃料用エタノール製造技術,そして地球温暖化対策のバイオ燃料製造技術という3回のバイオマスブームを経て,現在の立ち位置があることに気づく.現在,海外では,ターゲットがバイオ燃料から高付加価値製品に拡がり,バイオエコノミー実現への取組が加速する.この潮流に対抗すべき国内小規模技術開発上のブレイクスルーとしては,「原料価値の最大利用」,「個性化」そして「地域密着」が重要であり,個性の一つとして,人への親和性を利点とする「バイオプロセス」の導入が鍵となるものと考える.著者らが開発した,草本原料の前処理・糖化技術(CaCCOプロセス)については,適用性拡大に向けたプロセスの簡素化と改良,酵素生産技術など周辺技術の充実等を図っており,地域生物資源の高度利用技術としての実用化をめざす.