近年, 主成分分析を用いて時系列データ全体を包括的に比較評価する手法が, 歩行に関するバイオメカニクス研究でも広まりつつある. しかし, 各被験者から複数試行計測したすべてのデータを主成分分析にかけた先行研究では, 歩行特徴について個人差の要素と再現性の要素とを適切に分析できていないことが指摘できる. そこで本研究では, この課題を解決する分析手法を提案し, 先行研究で実施した転倒経験者と非経験者の歩行特徴の比較研究を題材として提案手法の妥当性を検証することを目的とした. 本研究の結果, ①従来手法と提案手法の分析結果はおおむね一致すること, 及び②提案手法は従来手法に比べてPCAの結果が極めて安定することの2点が確認された.