抄録
今回紹介するタキザワプログラム(創動運動)は理学療法士の滝沢恭子氏が発案され、神奈川県を中心に老人病院や老人保健施設、特別養護老人ホーム入所者、デイサービス利用者に20年以上実践されてきたものである。このプログラムの名前は発案者の滝沢氏に由来している。老人病院や介護施設では心身機能が著しく低下した高齢者がその対象となることが多い。身体機能も気力も低下しているこのような高齢者に特に必要なことは、「歩きたい、機能を良くしたい」という気持ちを引き出すことである。そのためには運動による痛みや疲労を感じさせないこと、運動療法に安心感、信頼感を抱かせること、そして常に励ましを与えることである。タキザワプログラムはまさにそれらを実践し、心理的な効果のみならず身体的効果も引き出しているために、「体の動きを本人が作りだす」という意味で、創動運動という名前もついている。また、これは疾患別機能訓練というよりはその機能状態を重視した機能訓練であると言え、対象者の機能について熟知していれば運動指導が可能である。このプログラムが実践されてきた病院や施設では、対象者の精神的および身体的効果について経験的に知られている。現在、その効果についても科学的な研究がなされているが、今回は運動の実際について説明する。