抄録
2014年8-9月,2015年4-5月,8-9月に,東京湾奥域の北部の干潟(ふなばし三番瀬海浜公園と谷津干潟)と西部の干潟(多摩川下流部と河口部)において,底質環境やマクロベントス量がシギ・チドリ類の種数や個体数密度に与える影響について調べた.シギ・チドリ類は北部の干潟に多く分布し,その違いは,採食方法が異なる3つのグループ(視覚・連続つつき型,視覚・立ち止まりつつき型,触覚・連続つつき型)のうち,視覚・立ち止まりつつき型と触覚・連続つつき型が北部に偏って分布していたためであることがわかった.視覚・立ち止まりつつき型と触覚・連続つつき型のなかで特に優占していた種は,それぞれダイゼン Pluvialis squatarol とハマシギ Calidris alpina であった.一般化線形混合モデルによる解析を行なったところ,ダイゼンでは大型多毛類,ハマシギでは大型,小型多毛類の個体数密度が重要な分布規定要因であることが示唆された.このことから,北部に偏ったシギ・チドリ類の分布は,食物となる多毛類,特に大型多毛類の個体数密度によるところが大きいと考えられた.