びわこ健康科学
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Print ISSN : 2758-1780
原著論文
PKCδはアルツハイマー型認知症のタウタングルに蓄積する
園田 悠馬遠山 育夫秋山 治彦川又 敏男
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2022 年 1 巻 p. 29-40

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抄録

Protein kinase C(PKC)ファミリーは,アルツハイマー病(AD)のタウ病理に関連することが知られている.Novel PKCアイソフォームの一つであるPKC delta(PKCδ)は,ヒトの脳において細胞特異的ではなく普遍的な役割を果たしており,成長,分化,アポトーシスの制御などの細胞機能において重要である可能性がある.しかし,AD脳におけるPKCδの局在と機能に関する情報が殆どない.本研究では,免疫組織化学法を用いて,高齢健常者およびAD患者の剖検脳におけるPKCδの局在を検索した.高齢健常脳では海馬の顆粒層において,PKCδの点状染色が錐体細胞の細胞質または核で観察された.一方,AD脳では,錐体ニューロン細胞体におけるPKCδの発現は高齢健常脳よりも低かった.さらに,AD海馬の老人斑内,多数の神経原線維変化(NFT)および変性神経突起は,PKCδに対して強く標識された.AD海馬の残存ニューロンは高齢健常者と比較してPKCδ弱陽性であり,多くの細胞内NFTはCA1領域および海馬台ではPKCδ強陽性であった.AD海馬を免疫電子顕微鏡法で観察したところ,PKCδがNFTのpaired helical filaments(PHF),核,小胞,リソソームに局在していることが示された.免疫二重染色法では,PKCδがタウ病理に関与するGSK3βと広範囲に共局在していることが明らかとなった.これらの結果は,AD脳において,PKCδは細胞内NFTのPHFに局在し,タウ病理学において重要な役割を果たしていることを示唆している.

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© びわこリハビリテーション専門職大学
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