2017 年 2017 巻 46 号 p. 7-23
神奈川県南西部に位置する真鶴半島の先端部はお林とよばれる魚つき林が広がっており、人工林ながらスダジイ、クスノキなどの常緑樹の極相が形成されている。お林にはクロマツ・アカマツの大木も多く残存しているが、長年、マツ枯れへの対策が必要な状況となっている。しかし、お林内のマツ類やスダジイと共生する外生菌根菌の多様性や生育状況に着目した、大型菌類(きのこ類)の通年調査は十分に行われていない。本研究では、お林および真鶴半島から北西6 km に位置する南郷山のアカマツ自然林を対象に、大型菌類を主とする子実体の発生状況の通年調査と外生菌根の形成状況に関する調査を行った。野外調査およびデータ収集は、地域児童らを中心に、地域住民、学校教員、そして博物館のボランティアスタッフらが協働する市民参加型調査として行われた。その結果、お林では129 種156 標本の菌類と6 種6 標本の変形菌類が記録されたが、明らかにマツ類の外生菌根菌であったのは、そのうちの1 種1 標本のみであった。一方、南郷山では、菌類は58 種72 標本、変形菌類は2 種2 標本が記録され、そのうちマツ外生菌根菌は7 種9 標本で、採集された菌類全体の約13% を占めていた。しかし、土壌中の菌根の感染状況を解析したところ、お林マツ林においても一定数の菌根の形成が見られ、子実体が著しく少ない環境下でも、マツ菌根菌が確かに生育していることが確認された。今後、お林に生育する菌根菌の菌根形成状況を改善させることができれば、森林の自助能力を有効活用した、お林の景観保全に繋がると期待される。