桐生大学紀要
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ヘキサナール刺激でドーパミンを放出した PC12 細胞のドーパミンの再蓄積作用
小林 葉子
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研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

2017 年 28 巻 p. 25-31

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抄録

すべての食品に匂い(香り)がある.食品に含まれる匂い(香り)物質は,食品中の栄養素と同様に体内に取り込まれ,生理作用を示すと考えている. ヘキサナールは炭素数6 の直鎖アルデヒドであり,植物特有の新鮮な香りを構成している物質の1 つである. これまでに,私たちは,ヘキサナールがラット脳線条体切片及びラット副腎褐色細胞腫(PC12)細胞からのドーパミン放出を促進することを報告している.  ドーパミンを放出した細胞は,次の刺激に応答するために,細胞内にドーパミンを再蓄積する必要がある. 本研究では,ヘキサナール刺激によりドーパミンを放出した PC12 細胞のドーパミン再蓄積について検討した. ヘキサナール刺激を受けた PC12 細胞内のドーパミン量は,1 時間で,刺激を受けていない細胞と同程度まで回復した. ドーパミンの再蓄積は,ノルアドレナリン及びセロトニン再取込み阻害薬であるイミプラミンにより阻害された. しかし,ドーパミンの前駆体であるチロシンによる有意な影響は検出されなかった.すなわち,ヘキサナール刺激後の PC12 細胞内へのドーパミンの再蓄積には,新たなドーパミン合成よりも,イミプラミンが作用するモノアミン輸送体による再取込みが関与することが示唆された. 生体においても,血流中のヘキサナール濃度が減少すれば,ドーパミンを放出した細胞内にドーパミンが再蓄積されると考えられる.

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© 2017 桐生大学・桐生大学短期大学部
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