2020 年 31 巻 p. 33-42
生産効率性が良く温度・時間管理が容易であるスチームコンベクションオーブン(スチコン)は,大量調理施設に て需要が高まっている.スチコンを用いておいしい「めし」の炊飯方法を確立することは,給食施設における経営管 理や,国民の食べる喜びを満たす点からも重要である.そこで本研究では,おいしい「めし」を作るための,大量炊 飯の調理条件を見いだすことを目的に,少量調理用炊飯ジャーと大量調理用ガス自動炊飯釜およびスチコンにて炊 飯した「めし」の重量,水分率,温度履歴,テクスチャーの測定および嗜好型官能評価をおこない,比較検討した. スチコン150℃および170℃炊飯は,炊飯ジャー,ガス自動炊飯釜よりも沸騰に要した時間が短く,特にスチコン 170℃の下層部は温度が最も高かった.また水分量も少ないことから,「めし」の物理的性質には沸騰継続時間や最大 温度が関与している可能性が示された.しかしスチコン170℃は凝集性が高くねばりも強い傾向にあり,細胞の崩 壊と外周へのでんぷんの流出があると考えられた.官能評価の結果,試料間に“好ましさ”の差は認められなかった が,スチコン150℃の「めし」の順位平均はすべての質問項目で最下位であった.今後は170℃でスチコン炊飯をおこ なった時の,炊飯時間や加水量を検討する必要がある.「めし」の好ましさを決定づける要因を追究することは,大 量調理におけるおいしい「めし」の炊飯方法の確立に繋がると考えられる.