抄録
食品には様々な匂い (香り) 物質が含まれ,食品特有の匂い (香り) を構成している.炭素数6 及び9 の直鎖脂
肪族アルデヒドであるヘキサナール (n-hexanal) およびノナナール (n-nonanal) も,食品の匂い (香り) を構成する
物質である.私たちは,食品中の匂い (香り) 物質は他の栄養素と共に体内に取り込まれ,生理作用を持つ,と考
えている.これまでに,ヘキサナールやノナナールがラット脳線条体切片やラット副腎褐色細胞腫 PC12 細胞から
のドーパミン放出を促進することを報告している.
バクテリアルシフェラーゼは,脂肪族アルデヒドと還元型フラビンモノヌクレオチド (FMN) をカルボン酸と
FMN に酸化する反応に伴い青緑色に発光する化学反応を触媒する.pCMVlux は,サイトメガロウイルスプロモー
ターの下流に完全ヒト発現最適化合成ルシフェラーゼ遺伝子カセットを含んでいるプラスミドである.
本研究では,pCMVlux を導入したアフリカミドリザル腎由来 COS7 細胞 (COS7-pCMVlux) を用い,ノナナール
及びヘキサナールを基質とするバクテリアルシフェラーゼの発光の検出を試みた.ノナナールに対する発光はヘキ
サナールよりも強く,還元型 FMN を測定溶液に加えることにより増強した.COS7-pCMVlux 細胞からの発光は,
還元型 FMN を添加しても,ノナナール添加 15 秒以内には50%以下に減衰した.超音波で破砕した COS7-pCMVlux
細胞では,ノナナールに対するバクテリアルシフェラーゼの発光は,還元型 FMN の存在下で低値を示し,発
光時間の延長は見られなかった.
以上の結果から,ノナナールは COS7-pCMVlux 細胞に取り込まれ,発光すると考えられる.