地質調査研究報告
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論文
インドネシア東部フローレス島パジャワ地熱地域におけるMT法データの2次元及び3次元解析
内田 利弘Tae Jong LEE本田 満Achmad ASHARIAchmad ANDAN
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2002 年 53 巻 2-3 号 p. 265-283

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抄録

地質調査総合センター,新エネルギー・産業技術総合開発機構,インドネシア鉱物資源調査局間の共同研究の一環として,インドネシア東部に位置するフローレス鳥パジャワ地熱地域においてMT法による比抵抗調査を実施した. 得られたデータについて2次元解析及び3次元解析を行い,地熱貯留層構造について解釈を行った. 解析に用いた3次元インパージョン手法は平滑化拘束つきの線形化最小二乗法に基づいており,地下の比抵抗パラメタに加え,見掛比抵抗に含まれるスタティックシフトを同時に求めることができる. 2次元及び3次元解析モデルを比較した結果,両者が互いに整合性がとれていること,及び,本3次元インパージョン解析手法を実測のMT法データに十分適用できることを確認した. しかし,2次元解析,3次元解析とも不完全な要素を含んでいる. 地質構造が複雑で3次元性の強い地域に2次元解析を適用すると,測線下や側方にある3次元的構造のため,2次元モデルには偽像が生じることがある. 逆に,本研究で用いた3次元解析法では,均質媒質を仮定して求めたヤコビアン行列 (感度行列)をすべての反復で用いているので,コントラストの大きい構造の場合,得られるモデルの信頼性が悪くなることがある. パジャワ地熱地域の中心であるマタロコ地区における比抵抗解析結果は以下のような特徴を有している. 地下浅部には薄い高比抵抗層がありこれは変質をあまり受けていない火山l噴出物に相当する. しかし,地表徴候のある区域では浅部から低比抵抗を示す. その下部には,調査域全体にわたって低比抵抗層が広がっている.特に地表徴候地の下は1 ohm-m程度の低比抵抗層であり,その層厚は400-500 m 程度である. この低比抵抗層は貯留層の帽岩になっていると解釈され,浅部坑井調査からもモンモリロナイトの分布が確認されている. 低比抵抗層の下には高比抵抗基盤が広 がっており,これは熱水の貯留部に相当すると解釈される. 高比抵抗基盤は地表徴候地の下で最も浅く (深度は約500m),西方に向かって急激に深くなっている.

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© 2002 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
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