地質調査研究報告
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論文
インドネシア共和国フローレス島中部バジャワ地域の ウォロボボ,ナゲ,マタロコ地熱地帯における地熱系に関する概念モデル
赤迫 秀雄松田 鉱ニ田篭 功一小関 武宏高橋 洋Sjafra DWIPA
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2002 年 53 巻 2-3 号 p. 375-387

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抄録

インドネシア共和国で遠隔離島小規模地熱の探査に関する研究協力が実施された. このプロジェクトの主要な目的はインドネシア版地熱資源総合解析システムを構築することにある. この目的のため,フローレス島中部のパジャワ地域がモデルフィールドとして選定された. 初期における広域の地質調査と地化学調査により,パジャワ地域内ではウォロボボ,ナゲ,マタロコ地熱地帯の地熱ポテンシャルが高 いと推定された. このため,探査の重点はこれら3地熱地帯におかれた. ウォロボボ地熱地帯では,ウォロボボ変質帯をとおる火口丘群の配列により示される南北方向の断裂帯が火山活動を規制している. 変質帯付近のこの断裂帯を高温のマグマ起源ガスや蒸気が上昇しており, 供給源付近は525°C程度の温度と推定される. このガス・蒸気が地下水に吹き込み,地下300m 付近に強酸性SO4型熱水(170~180°C)が分布していると推定される. 変質帯の南方約2.5km付近に 湧出するCl濃度の比較的高い温泉水の起源はこのような熱水層の1つと推定される. また,変質帯は主としてこの熱水層から派生したガスや蒸気によって形成されたと考えられる. ナゲ地熱地帯では,ワエパナ川沿いの北東・南西方向の断層に沿って高温のマグマ起源ガスや蒸気が上昇している. このガス・蒸気が地下水に吹き込み,地下200m 付近に強酸性SO4型熱水(約150°C)が分布していると推定される. この熱水が地下水による希釈を受けてワエパナ川沿いに湧出してい る. マタロコ地熱地帯では,マタロコ変質帯周辺の火口丘群から地下へ浸透した天水を起源とする深部熱水がマグマからの熱やガス,岩石との相互反応によって形成されている. この熱水はまだ確認されてい ないが,マタロコ変質帯の東西両側に推定される南北方向の断裂帯に沿って地下400m ないし500m 付近の粘土化した難透水層の下端付近まで上昇している. また,北西-南東方向のワエルジャ断層沿いの断裂帯も熱水の流動を規制していると考えられる. この貯留層は270~306°Cの温度と推定される. この貯留層から派生した蒸気・ガスはワエルジャ断層沿いの断裂帯に沿って上昇している. これら の蒸気・ガスによって難透水層上部に192~230°C の蒸気卓越層が形成されている. また,この蒸気・ ガスが浅層地下水に吹き込んで生成された酸性SO4型熱水がワエルジャ川沿いの地表付近に分布して いる.

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© 2002 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
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