地質調査研究報告
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論文
中国で2002 年春に採取した風送ダストの非水溶性成分の化学的特徴
太田 充恒張 仁健寺島 滋金井 豊上岡 晃今井 登松久 幸敬清水 洋高橋 嘉夫甲斐 憲次林 政彦
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2005 年 56 巻 7-8 号 p. 259-272

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抄録

2002年春に中国の北京,青島,合肥の3地点で風送ダスト試料を採取し,化学分析を行い,その特徴について検討を行った.大気中ダストは粗い粒径側で濃度が高く,粒径に対する濃度変化は試料採取地点によって異なっていた.ダストイベントが発生した時は,2μm以上の粒子に著しい増加が認められた.一例外を除く全ての試料の化学組成 (Al2O3 Na2O, P2O5, Total Fe2O3, Rb, Zr, and La) は,粗大粒子側ではほぼ濃度が一定であるが1.1 ~2.1 μm よりも細かい粒子において急激に減少した.この結果は,鉱物質エアロゾルの寄与が細粒粒子で著しく減少することを表している.ただし,3月に北京で観測されたダストイベントでは,これらの元素は粒径変化に関係なくほぼ一定の濃度を示した.この結果は,大規模なダストイベントは細粒粒子においても大量の鉱物質エアロゾルを供給していることを表している.元素濃度とAl2O3 濃度の比を見たところ,粗粒‐中粒にかけてほぼ一定の値を示すものの1 ~2μmを境に急激に減少する.すなわち,鉱物組成は粗粒‐中粒ダストではほぼ均質であるが細粒粒子側で変化することを示している.元素濃度比の粒径に対する変化に着目すると,ダストイベントの有無や3 試料採取地点間に系統的な違いは認められなかった.したがって,中国内陸部から運ばれる風送ダストと試料採取地点周辺から巻き上げられた物質の化学組成には共通点が多いことを示している.一方,いくつかの重金属元素 (Cr, Ni, Cu, Zn, Mo,Cd, Sb, Sn, Pb, and Bi) は,鉱物質エアロゾル起源の元素 (Al2O3 など) とは異なる特徴を示した.これらの元素の濃度及びAl2O3 濃度比は粒径が細かくなるに従って著しく増加する.例えば,Cu/Al2O3 比とPb/Al2O3 比は粒径が細かくなるに従って,10~100倍も劇的な増加を示した.これらの粒径に対する変化は細かい粒子ほど人為起源物質の寄与が多いことを示している.

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© 2005 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
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