琵琶湖周辺の優白質花崗岩体中には珍しい細粒暗色包有岩 (MME) の産出を,琵琶湖南方の田上花崗岩体を構成する中−粗粒黒雲母花崗岩と中粒斑状黒雲母花崗岩中で確認した.それらの大きさは1 cm程度から最大20 cm強であり,形はほぼ球状から楕円状であるがやや細長いものもある.有色鉱物として黒雲母のみ含む (最大約27 %).本地域のMMEは,アプライト・ペグマタイトとしばしば共存している.中粒斑状黒雲母花崗岩中のMME について,全岩化学分析 (主成分元素,REEを含む微量元素) を行うとともに,鉱物集合状態と鉱物組織の観察ならびに鉱物化学組成 (長石類,黒雲母,イルメナイト) の解析を行った.これらの結果は,産状や組織等のデータとともに,本MMEがよく知られているマグマ混合による産物であるとの考えではなくて,中粒斑状黒雲母花崗岩マグマからの早期晶出による産物であるとの考えにより整合的であるように思われる.MMEとアプライト・ペグマタイトとの共存は,MMEの成因における揮発性成分の重要な役割を示唆する.