抄録
背景と目的
近年,本邦で妊娠・出産・育児を行う外国人女性は増加している。本研究は,社会的ハイリスク妊婦に位置付けられる在日外国人妊産婦の,妊娠期から産後1か月までの主観的体験の径路の類型を明らかにすることを目的とした。
方 法
研究方法は複線径路・等至性モデルを用いた質的記述的研究である。在日外国人が増加している地方の一次医療機関で出産した在日外国人12名を対象に,妊娠期,分娩期,産後に関する体験について半構成的面接及び参加観察を行った。その結果を,複線径路・等至性モデルに基づき分析した。
結 果
妊娠期から産後1か月までの在日外国人妊産婦の主観的体験の径路の類型として,類型1【これまでの妊娠・出産・育児の経験から日本での妊娠・出産・育児のイメージをもち問題なく過ごす】類型2【妊娠・出産に伴う身体の変化と日本の医療の理解度に応じてやり過ごすか医療者を求めるかを選択する】類型3【妊娠・出産に伴う身体の変化と日本の医療について,言語的・文化的に理解できないまま日本の医療者に頼れずそのままやり過ごす】類型4【妊娠・出産に伴う身体の変化と日本の医療について理解できないため日本の医療者に頼らず自国のコミュニティーに依存する】類型5【自己の信念に基づいて日本の医療のサポートを最低限しか受け入れない】の5類型が見出された。
考 察
在日外国人妊産婦への妊娠期から産後1か月までの支援においては,妊婦が所属するコミュニティーや妊婦の信念に基づく視点を持つことの必要性が示唆された。