文化看護学会誌
Online ISSN : 2433-4308
Print ISSN : 1883-8774
原著論文
統合失調症の子をもつ高齢母親の民間信仰の体験
―地域文化に根ざした地域看護活動の示唆を得るために―
座嘉比 照子大湾 明美田場 由紀
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2022 年 14 巻 1 号 p. 1_31-1_38

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抄録

目  的
統合失調症の子をもつ高齢母親 (以下,母親)の子の病の経過の中で,民間信仰の体験を明らかにし,地域文化に根ざした地域看護活動への示唆を得ることである。
方  法
沖縄で暮らす統合失調症の子を持つ70歳以上母親10名を対象に半構造化した面接調査を行った。調査内容は,母親の民間信仰に対する体験であり,分析は,母親の民間信仰の捉え方,民間信仰への希望,民間信仰の体験にまつわる自己評価はどのようなものか,の視点で質的帰納的に行った。
結  果
母親のユタ利用のきっかけは,「子の病」8名,「夫の病」1名で利用なしが1名であり,ユタ利用の経緯は,「他者の勧め」7名,「自己の意思」2名であった。
母親の民間信仰に対する捉え方は,【暮らしに染み込む民間信仰】,【祖先とのつながりをつくる民間信仰】,【肯定されるだけではない民間信仰】であった。子の病気に対する民間信仰への希望は,【霊の力への期待】,【親の子を想う愛情の現れ】であった。民間信仰を活用したこと (活用しなかったこと)についての自己評価は,【医療では補うことができない心の支え】,【「医者半分ユタ半分 (医者とユタの併用)」の支持】,【支えを受けつつ育つ拝む力】,【多様な価値の受け止め】であった。
考  察
地域看護活動のあり方は,地域文化からみた病気の認識への理解,相談における家族への対応の具体化であることが示唆された。

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