文化看護学会誌
Online ISSN : 2433-4308
Print ISSN : 1883-8774
原著
地域ケアにおける人々のつながりに関する研究
― 飯田市郊外の住民が語った「結い」の実態をもとに ―
武分 祥子柄澤 邦江岩﨑 みすず熊谷 寛美
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2010 年 2 巻 1 号 p. 1_1-1_10

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抄録

 飯田市における人々のつながりから地域ケアにおける助け合いの可能性を探るために,この地域での「結い」の実態を把握することを目的とした。そのために,飯田市郊外12地区,19名の情報提供者に対して聞き取り調査を実施した。
 その結果,飯田市では昔は農作業を中心に労働力を提供しあう「結い」が盛んに行われていたことが明らかになった。現在では,「結い」は縮小しているものの冠婚葬祭や農作業の一部などで行われていた。【現在の人々のつながり】では,「結い」を通してできた人々のつながり,公的あるいは民間組織活動によるつながり,共同での作業や行事,親戚によるつながり,家族のつながりがあった。【人々のつながりの変化】では,「結い」の衰退,農作業・仕事の変化,地域のつながりの変化,家族の結びつきの変化があった。さらに,【これからの人々のつながり】では,別の形の組織化,地域の中での人間関係の維持を望み,その一方で将来の地域での助け合いの困難を懸念していた。
 以上より,飯田市において「結い」はかたちを変えて残ってはいるが,人々のつながりは時代や地域生活とともに変化していること,人々は地域における人間関係の維持の手段として,今後も異世代交流の場や助け合いの組織化を望んでいることが明らかになった。よって,人々のつながりを育むような組織化活動が今後の地域ケアにおいて必要であると考えられた。

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