放送研究と調査
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制作者研究NEO <地域にこだわる>  【第3回】 伊藤孝雄(NHK) 後編
樹と水と風と人との映像詩(ファンタジー)
渡辺 勝之七沢 潔
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2020 年 70 巻 3 号 p. 50-73

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抄録

2月号に続く「制作者研究NEO」<地域にこだわる>第3回伊藤孝雄の後編。東京・制作技術局映像制作部(旧撮影部)に異動した伊藤は、NHKスペシャルなど海外取材の大型番組を連作するが、91年に希望して仙台局に異動してからは、一転して農山村や漁村などを舞台に東北の大地に根付いて生きる人たちを描く番組の撮影と制作に没頭した。後編では仙台での28年の間に伊藤がつくった番組とその制作の軌跡を検証する。   この間の伊藤の番組は、①NHKスペシャル『マサヨばあちゃんの天地~早地峰のふもとに生きて~』(1991年)、『雪の墓標~奥会津・葬送の風景~』(1993年)など風土の中の人の暮らしと結びつきを見つめる番組や、②プライム11『こぶしに“賭ける”~娘たちの民謡修業~』(1995年)のようにひたむきな職人像を追いかけた作品群、③宮沢賢治や太宰治など東北出身の文化人の内面をドラマの手法も交えて映像化した作品などに大別される。そして①の延長線上につくられたNHKスペシャル『イグネ~屋敷林が育む田園の四季~』(2002年)に始まる「仙台三部作」は仙台周辺の集落の自然と人の営みをカメラマン主導の映像記録として積み上げてゆく、発想も手法もユニークなプロジェクト。とくに季節風の恵みを受ける仙台市荒浜の集落の漁師や農家の暮らしを描いた『イナサ』は東日本大震災を挟んで去年まで8本にわたりシリーズ化され、津波被災後を懸命に生きる人々の姿の貴重な映像記録となっている。これらの作品群はいかにして生まれ、現在の日本に何を伝えているのか、番組分析とインタビューで浮き上がらせる。 (伊藤孝雄は現在NHKテクノロジーズ仙台総支社シニアスタッフ)

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