放送研究と調査
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【NHK 文研フォーラム 2021】“コロナ時代”の家庭学習とメディア利用
渡辺 誓司酒井 厚
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2021 年 71 巻 8 号 p. 48-63

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抄録

NHK放送文化研究所の文研フォーラム2021では、中学生・高校生の家庭学習に注目し、コロナ禍前の状況との変化を踏まえながら、家庭学習におけるメディア利用の可能性について考えるプログラムを開催した(2021年3月3日、オンラインで実施)。パネリストに、子どもたちに学びの場と居場所を提供し、学習支援を進めている認定NPO法人カタリバ代表理事で中央教育審議会委員の今村久美氏を迎え、コロナ禍の前後に実施した調査の報告を東京都立大学准教授・酒井厚氏と文研が行い、調査に協力した3人の保護者も加わって議論した。 まず、中学生・高校生の親子を対象に2019年と2020年に実施した調査から、下記の点が報告された。 ・家庭学習で利用が多いデジタル機器は、スマートフォン、パソコン、タブレット端末、電子辞書。 特にスマートフォンの利用が増加し、全体的にデジタル機器やデジタルコンテンツを利用する学習者が増加。 ・コロナ禍による学校の臨時休業期間中にオンライン授業の配信があったのは約3割。 ・デジタル機器を利用する学習者は、新しいことへの関心が高く、母親もそのような学習に積極的である。 ・家庭学習でデジタルメディアの利用を継続することは、学習に対する前向きな態度につながる 調査の結果に保護者からの各家庭の学習の実態に関する発言を交え、デジタルメディアの利用を通じて一人ひとりの子どもに合った個別最適の学習を実現できることや、対面の授業にはないオンライン授業の可能性と期待、地方と都市あるいは日本と世界をオンラインで結び距離の制約を越えた学習が可能なこと、デジタルメディアを利用した家庭学習の継続によって学習へのやる気が高まる効果があること、などが語られた。 また、課題として、家庭学習でデジタル機器を利用している中学生・高校生の多くが、勉強中に機器を使って遊んでしまった経験があるという調査結果を踏まえ、デジタルメディアとの上手なつきあい方を身につける必要があること、有効なのは、親子が話し合い、子どもも十分納得したうえで利用に関するルールを作ること、それによって親子がともにデジタルメディアに関するリテラシーについて考える機会にもなることが指摘された。

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