本稿は、2021年3月4日にNHK文研フォーラムで研究発表をした「市民が描いた『戦争体験画』の可能性 ~地域放送局が集めた5,000枚の絵から考える~」の採録である。この研究発表では、NHKがこれまで実施してきた戦争体験画(以下、「体験画」)収集プロジェクトについてさまざまな視点から論じた。まず体験画の特徴として、「描き手が現場に立ち会っていること」などを挙げ、写真よりすぐれている点として、数多くの戦争体験者の多角的な視点が提示される点や、カメラでは撮り逃してしまう決定的瞬間を残せる点などを指摘した。また、体験画を描くこと自体が力を持っていることや、体験画を通じて体験者と取材者の対話が可能になっていくこと、それに体験画に内在する場所を媒介に人々がつながっていけることなどについても、VTRで事例を紹介しながら伝えた。そして、地域放送局が実施した体験画収集の取り組みは、かつてアメリカの地方紙が取り組んだ「シビックジャーナリズム」と共通点があることについて論じた。最後に、発表後に参加者から寄せられた感想の一部も掲載した
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