抄録
東日本大震災から10年を機に、大学、文部科学省、民放、NHKの担当者と、災害デジタルアーカイブの利活用と持続性を考えるシンポジウムを開催した。
・国のポータルサイト国会図書館“ひなぎく”に連携するアーカイブは、当初の21から53に増えた。しかし、仕組みが複雑だとして連携しないアーカイブも出てきた。また“ひなぎく”には当初、地図機能があったが、予算からなくなり、防災教育や復興観光での利用が困難になった。
・防災教育での利活用:新学習指導要領「生きる力」が導入され、岩手では、アーカイブを活用した防災復興教育が始まった。2022年全国の高校で必修化される地理総合での活用も期待される。一方、災害映像は、心的ストレスを与えることもある。なぜ見るのか、意味を考え、感想を話し合うなど、「リテラシーと共感」が大切である。
・マップ機能を生かした朝日放送の震災バーチャルツアーや震災展示をまるごとアーカイブでバーチャル公開するNHKなど、デジタルとリアルの連携も進む。一方、維持コストが課題でGoogleの支援でアーカイブを公開した放送局もある。「民放連で、国立で、社会全体で、災害アーカイブを」と模索が続く。災害資料は、国家的知的財産であり、教訓を伝えて、命を守り、持続可能な社会をつくるための「未来への投資」である。3月11日を「防災教育と災害伝承の日に」と提案も行われた。