抄録
2024年1月に発生した能登半島地震で、NHKのアナウンサーは、「今すぐ逃げること!」など強い口調や表現を使い、津波からの避難を呼びかけた。避難を強く促すこうした口調や表現は、どのように受け止められたのか。NHK放送文化研究所では2024年2月に全国調査を行った。その結果、呼びかけを肯定的に受け止めた人は9割以上にのぼり、ただごとではない緊急事態であることを示すという点で、呼びかけが十分に機能したことがわかった。その一方で、こうした呼びかけを放送で使っていくことに対しては、およそ4人に1人が「使ってもよいが、使いすぎないほうがよい」と回答し、使いすぎると効果が薄れるおそれがあることを示唆した。また、2011年の東日本大震災では「避難して(避難する)」を使った呼びかけが多かったのに対して、能登半島地震では、「逃げて(逃げる)」が多く使われた。全国調査で、「逃げて」と「避難して」ではどちらが、危険がせまっていることがより伝わるかを質問したところ、8割近くの人が「逃げて」を選んだ。「逃げる」は和語、「避難」は漢語という違いがあり、一般に話しことばにおいては、日本にもともとあったことばである「和語」を使うとわかりやすい表現につながる。避難の呼びかけにおいても、和語である「逃げる」を使うと、より相手にストレートに伝わる表現になると考えられる。