抄録
日本語の現況を把握するために毎年おこなっている「日本語のゆれに関する調査」の結果について,前稿(塩田雄大(2025))に引き続き記す。調査の結果から,それぞれ次のような傾向が明らかになった。
【外来語のゆれ(韓国・中国由来の語)について】
▶現状では,相対的に,ある程度「ゆれ」の大きいものとして「キンパ」「タッカルビ」があり,一方,それほど「ゆれ」の大きくないものとして「マッコリ」「カクテキ」「トッポギ」「チンジャオロース」「ユーリンチー」が位置づけられる
▶年代別には,30・40代では,ほかの年代に比べておおむね「ゆれ」が小さい
▶学歴別には,大卒層では,非大卒層に比べておおむね「ゆれ」が小さく,この傾向は過去の諸調査から導き出された一定の傾向と共通している
【「1/2/3日おきに」の解釈のゆれについて】
▶「1日おきに(船が来る)」では,「3月9日に来たら,そのあとは3月11日,13日,15日,…」というようにとらえる方式(間に「1日」をはさんで勘定していく「挿入日数カウント式」)の解釈が最も主流である
▶一方,「2日おきに」「3日おきに」では,相対的に,間にそれぞれ「2日」「3日」をはさんで勘定していく「挿入日数カウント式」の割合が少なくなり,日数を単純に足し算して勘定する「単純加算式」の割合が多くなる
▶「1日おきに」と「2日おきに」に関して,両方とも「3月9日に来たら,そのあとは3月11日,13日,15日,…」である(つまり「結果的に同義である」)ととらえる人が,全体の2割にのぼる
【「より」の解釈のゆれについて】
▶「3階より上」と言ったとき,「3階を“含む”」という人が4割強,それに対して「3階は“含まない”」という人が5割強と,解釈にかなりの「ゆれ」がある現状が確認され,また「兵庫県より西」「明治時代より前」においても類似の傾向が観察された
【「以前」の解釈のゆれについて】
▶「明治時代以前」は,全体では「明治時代は“含まない”」という回答が多かったが,20~40代では,「明治時代は“含まれる”」という回答が多く,この「明治時代以前」が「明治時代は“含まれる”」という方向に変化し始めている可能性がある
【字幕スーパーの漢字に関する意識調査について】
▶3割の人がテレビの字幕スーパーに難しい漢字が使われていると感じる一方で,難しい漢字を含む熟語については,一部をひらがなで書くよりも,「読みがな」を付けて漢字で書くほうがよいと考えている人が多い
▶人の名前の読みについては,「どう読むかわからないことがある」と感じている人が8割近くにのぼった