抄録
地域を舞台に描く連続テレビ小説(通称:朝ドラ)は,放送が半年と長く,地域にさまざまな影響をもたらす。今回,朝ドラ『おかえりモネ』を題材に,舞台になった宮城県気仙沼市・登米市の人たちが,どう受け止めたのかを調査,朝ドラが地域に及ぼす心理的効果について分析・考察した。
東日本大震災から10年後に放送された『おかえりモネ』は,震災3年後から現代まで,気仙沼市と登米市を舞台に,地域や人々の姿を色濃く描いた。気仙沼市は甚大な津波の被害があり,登米市は津波の被害がなかった。分析は,地域の描かれ方と震災の描かれ方について,現地の人たちへのインタビュー調査をもとに行った。
分析の結果,ドラマが地域の人たちに地域の魅力を再認識させ,地域のアイデンティティーを再構築する手段になっていたことがわかった。震災に関しては,ドラマが津波を経験した人とそうでない人(当事者と非当事者)は違うと描いたことに,多くの人が共感していた。そして,気仙沼市では被災体験の違いにより,人々の間に溝や線引きがあることが,登米市では,非当事者の意識が強くあることが明らかになった。
地域の人たちは,震災の経験がドラマよりはるかに過酷であるため,ドラマを見て,震災に対する考えが変化することは少なかった。震災から10年たって気持ちが落ち着き,ドラマを見て自分の震災後を振り返る人が多かったが,一方で10年たっても,震災によるトラウマからドラマを見られない人もいることが明らかになった。