抄録
NHK放送文化研究所は、テレビ番組に出演・登場する人物の多様性についての調査を2021年度から継続して実施している。NHKと民放キー5局の番組を対象に、2024年度も2つの調査を行った。
▼メタデータ分析に基づく番組全般(6月の1週間)の出演者のジェンダーバランスの調査と、▼コーディング調査による夜の全国向けニュース報道番組(6月と11月の月~金、計10日間)の出演者・登場人物(発言した、もしくは発言引用があった人)の性別、年層、障害の有無、人種的多様性、取り上げられたニュースの話題、その中での役割や職業・肩書、取材地の分布などの分析である。
出演・登場した女性と男性の割合は番組全般ではおよそ4対6、夜のニュース報道番組でおよそ3対7と、過去3回の調査とほぼ同じ傾向だった。これを番組全般は年代別、ニュース番組は年層別にみると、いずれも「中高年の男性とより若い女性」という構図である。
ニュースでは、男性は名前も肩書もある立場で登場することが多いのに対し、女性は名前が紹介されない人のほうが多く、いわば「名もなき市民」として登場することが多いという偏りも前年度と変わらなかった。また、登場人物の職業・肩書をみると、最も人数が多い「政治家」は男性が女性の約10倍、次に多い「スポーツ関係者」でも男性は女性の5倍を超え、女性が男性より多かったのは「年金生活者、高齢者」「若者、子ども」「親、家族(成人の場合)」と、肩書がない立場で話をする人たちだった。
ニュースにおける障害がある登場人物の割合は「あり」に「あるかもしれない」をあわせても1%未満で、日本の障害者の割合約9%を大きく下回った。取材地の分布では、東京への一極集中がこれまで同様に顕著だった。海外の取材地では「北米」が最も多く、また、人種的多様性では「日本人」に次いで「ヨーロッパ系」が多く、地理的に近く人口も多いアジアよりもアメリカの政治関連ニュースに重点が置かれていることを示唆する内容だった。全体として、テレビの世界は社会の多様性を反映できていないことを示している。