分析化学
Print ISSN : 0525-1931
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超伝導磁石を用いる環境ホルモン除去磁気分離システムの開発
三橋 和成吉崎 亮造岡田 秀彦小原 健司和田 仁
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2003 年 52 巻 2 号 p. 121-126

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抄録

本報告は,高勾配磁気分離を用いて水中のEDCsを大量・高速に浄化可能なことを実証したものである.著者らは,EDCsを水中から除去する目的で超伝導磁石による強力な磁気力を利用した高勾配磁気分離システムを開発した.このシステムは二次廃棄物を出さず,かつ高速除去が可能という特長を持つ.システムはEDCsに磁性を持たせる前処理と,磁気力を用いて除去する高勾配磁気分離装置で構成される.前処理には著者らが開発した疎水性を持つ強磁性酸化鉄微粒子を用いた.システムの原理は以下のとおりである.EDCsの多くは疎水性を持つので,疎水性表面を持つ微粒子を近づければ,疎水性相互作用によりそこへ吸着する.この微粒子に磁性があれば磁気分離が適用でき,汚染水を浄化することができる.実験では水中のビスフェノールAを69 ng/lから16 ng/lに,ノニルフェノールを7.0 mg/lから0.9 mg/lに減少できた.かつ,EDCsを含む約70 lの水を10数分間という短時間で浄化できた.更にEDCsを吸着した強磁性酸化鉄微粒子を再生し再利用できることも示した.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2003
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