分析化学
Print ISSN : 0525-1931
52 巻, 2 号
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総合論文
報文
  • 中村 由美子, 恩田 建介, 高東 智佳子, 宮 晶子
    原稿種別: 報文
    2003 年 52 巻 2 号 p. 107-114
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/06/19
    ジャーナル フリー
    LC/MS/MSを用いて下水試料中の女性ホルモン類を一斉定量する方法を開発した.本分析法により,下水試料中の17β-エストラジオール,エストロン,エストリオールをそれぞれ検出下限0.5,0.2,0.5 ng/lで測定することが可能となった.本分析法を実際に下水処理場の原水,処理水に適用し,ELISA法による分析結果と比較した.17β-エストラジオールの定量値はELISA法による値が本分析法の値より常に高く,擬似陽性による過剰評価の影響であると考えられた.更に,下水試料の女性ホルモン様活性を酵母を用いたバイオアッセイにより求め,女性ホルモン類の寄与を調べたところ,特に処理水では寄与率62.6% から69.8% と高く,中でもエストロンの寄与が高かった.下水処理場で女性ホルモン類の処理状況を把握することは環境ホルモン問題を考える上で重要であり,本分析法の開発により,実態把握が可能になったと考える.
  • 高田 一矢, 内田 哲男
    原稿種別: 報文
    2003 年 52 巻 2 号 p. 115-120
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/06/19
    ジャーナル フリー
    バッチ及びFIA法によるケイ酸塩中カルシウムとマグネシウムの吸光光度定量法を確立した.粉末試料25 mgを塩酸とフッ化水素酸で1晩室温にて分解した後,ホウ酸を添加して水で50 gの試料溶液とした.両元素の定量を妨害する鉄(III)をイソプロピルトロポロン-ベンゼン溶液によりあらかじめ抽出分離した.カルシウムはグリオキサールビス(2-ヒドロキシアニル)を用い,エタノール-水混合溶液中で定量した.マグネシウムはキシリジルブルーIIを用い,アルミニウムをトリエタノールアミンで,カルシウムをストロンチウム-グリコールエーテルジアミン四酢酸配位子緩衝溶液でそれぞれマスキングし,エタノール-水混合溶液中で定量した.バッチ法での発色条件に基づいて,両元素に共用できる3流路FIAシステムを設計した.本法での酸性岩から超塩基性岩にわたる5種類の標準岩石試料の分析結果は,一部の試料を除き認証値と約3% 以内で一致した.
  • 三橋 和成, 吉崎 亮造, 岡田 秀彦, 小原 健司, 和田 仁
    原稿種別: 報文
    2003 年 52 巻 2 号 p. 121-126
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/06/19
    ジャーナル フリー
    本報告は,高勾配磁気分離を用いて水中のEDCsを大量・高速に浄化可能なことを実証したものである.著者らは,EDCsを水中から除去する目的で超伝導磁石による強力な磁気力を利用した高勾配磁気分離システムを開発した.このシステムは二次廃棄物を出さず,かつ高速除去が可能という特長を持つ.システムはEDCsに磁性を持たせる前処理と,磁気力を用いて除去する高勾配磁気分離装置で構成される.前処理には著者らが開発した疎水性を持つ強磁性酸化鉄微粒子を用いた.システムの原理は以下のとおりである.EDCsの多くは疎水性を持つので,疎水性表面を持つ微粒子を近づければ,疎水性相互作用によりそこへ吸着する.この微粒子に磁性があれば磁気分離が適用でき,汚染水を浄化することができる.実験では水中のビスフェノールAを69 ng/lから16 ng/lに,ノニルフェノールを7.0 mg/lから0.9 mg/lに減少できた.かつ,EDCsを含む約70 lの水を10数分間という短時間で浄化できた.更にEDCsを吸着した強磁性酸化鉄微粒子を再生し再利用できることも示した.
  • 羽成 修康, 堀井 勇一, 谷保 佐知, 山下 信義
    原稿種別: 報文
    2003 年 52 巻 2 号 p. 127-138
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/06/19
    ジャーナル フリー
    ダイオキシン類等の大気汚染状況を正確に把握するためには,天候及び時間変動に左右されない環境試料の選択及び試料捕集法が重要な因子の一つとなる.従来行われている大気の短時間捕集法では時間変動が大きいことが判明している.しかし近年,大気汚染の長期的な指標として常緑針葉樹葉の有効性が指摘され始めている.本研究では,その常緑針葉樹葉を用いて大気中の塩素化ナフタレン(PCNs)及びダイオキシン類の測定を行った.特に底質試料について有効性が確認されているporous graphitic carbon(Hypercarb)カラム及びpyrenyl silica(PYE)カラムを併用したダブルカラム高速液体クロマトグラフ精製法を用い,53種のPCN異性体の詳細分離・分析に成功した.この方法を用いて,東京湾全周を含む20地点の定点観測地点から選択した5地点の常緑針葉樹葉(クロマツ)を分析し,含有されるPCNs濃度を測定した.その結果,選択された5地点のクロマツ葉中のPCNs濃度は630~1750 pg/g,wet wt. であった.東京湾底質と比較すると,PCN低塩素同族体(tri-,tetraCN)及び焼却炉由来のPCN異性体の存在割合が高かった.PCNsは焼却炉等,環境中での二次生成の可能性が高く,本研究で開発した簡便迅速・異性体詳細測定手法はPCNs等,ダイオキシン類似強毒性環境汚染物質について給源推定と危険性評価を行うための分析法として期待される.
技術論文
  • 中川 達央, 長村 俊彦, 柄谷 肇, 松村 竹子
    原稿種別: 技術論文
    2003 年 52 巻 2 号 p. 139-145
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/06/19
    ジャーナル フリー
    顕微鏡下における生理現象や化学反応の時空間変化を定量的に解析することを目的として,デジタル化高感度CCDと分光フィルターを使った高速時間分解分光反応画像解析システムを開発した.最大10枚のフィルターが装着可能な高速フィルター回転器を本システム専用に設計し,CCD検出器には冷却機構を装備した科学計測用の高感度CCDを使用した.ビニング動作によって更に検出感度を高めると同時にデジタル回路の構成や制御プログラムを工夫して200 ms/frameの時間分解能を実現した.本システムを評価するために,実体顕微鏡による非線形化学反応波の時空間パターンの観測及び落射蛍光顕微鏡による生物発光の観測を,それぞれの光源導入部などに改良を加えて行った.更に,これらの画像解析機能として吸光度演算,任意2点間のラインプロフィル描画,非線形反応パターンの移動速度演算などの機能を付与した.
ノート
  • 藤原 勇, 内山 明美, 佐々木 義明, 前田 瑞夫, 高木 誠
    原稿種別: ノート
    2003 年 52 巻 2 号 p. 147-150
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/06/19
    ジャーナル フリー
    CuII-imprinted microspheres with imidazole groups at the surfaces were prepared from a seed emulsion with divinylbenzene as a matrix-forming monomer and CuII as a template by radical polymerization. The seed emulsion was prepared from the polymerization of 1-vinylimidazole, styrene, and n-butyl acrylate mixture by a radical initiator. The obtained microspheres were uniform-sized spherical particles and their average diameter was 0.44 μm based on scanning electron micrography. The adsorption of the CuII ion (0.05 mM) on these microspheres was studied, and compared to non-imprinted ones. The adsorption of CuII ion increased on both microspheres with increasing pH. The template effect was observed, that is, the pH giving 50% adsorption of CuII ion on CuII-imprinted resin was lower by one unit than that on non-imprinted resin. The template effect was also observed for the ZnII ion, but not observed for the CdII ion.
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