抄録
本研究では,市販の銀粒子を用いて簡便に近赤外励起フーリエ変換-表面増強ラマン散乱(FT-SERS)スペクトルを得る方法を示した.この方法を用いて,置換位置の異なる2種類の構造異性体のピリジン系試料を用いて,近赤外領域において希薄溶液のSERSスペクトルの測定を行った.この方法によって得られスペクトルは通常のラマンスペクトルにより得られたものの約103倍の増強であり,定量を可能にするには十分の強度であった.更に構造化学的に新しい知見を得ることを目的とし,得られたスペクトルの1600 cm-1付近の測定試料による信号波形の違いを強度的に評価を行った.その結果,3位置換体の配座異性が1600 cm-1のショルダーを起こす主な原因と考えられ,ショルダーは配座異性の存在が環を構成する振動の振動形自体が変化を起こさない程度の影響を与えるものと考えられた.