分析化学
Print ISSN : 0525-1931
メチルチモールブルー水銀(II)塩を指示薬としてHg-EDTA溶液によるチオシアン酸イオンの容量分析
野村 俊明小松 寿美雄
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1968 年 17 巻 11 号 p. 1406-1411

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抄録

チオシアン酸イオンはメチルチモールブルー水銀(II)塩(Hg-MTBあるいはHgMe4-)およびエチレンジアミン四酢酸水銀(II)塩(Hg-EDTAあるいはHgY2-)と反応して,青色の[HgMe(SCN)]5-および無色の[HgY(SCN)]3-をそれぞれ生成する.しかし,[HgMe(SCN)]5-は水銀(II)に対してモル比で大過剰のチオシアン酸イオンと次式のように反応して黄色のH2Me4-およびチオシアン酸水銀(II)とに分解する.
[HgMe(SCN)]5-+SCN-+2H+→Hg(SCN)2+H2Me4-
そこで, HgY2-溶液を滴下すると過剰のチオシアン酸イオンが[HgY(SCN)]3-生成のために消費されて,終点近くで次式の反応が起こり,青色になって終点になる.
Hg(SCN)2+H2Me4-+HgY2-→[HgMe(SCN)]5-+[HgY(SCN)]3-+2H+
これを利用して少量のHgMe4-を指示薬としてHg-EDTA溶液でチオシアン酸イオンの直接滴定を行なった.
pH 6.3~6.6の間の一定のpHにしたチオシアン酸イオン試料溶液に少量の水銀(II)とMTB溶液を加え, 1×10-2M Hg-EDTA標準溶液で滴定して黄色が青色に変わったところを終点とする.そして同様に操作して求めた検量線からチオシアン酸イオン量を求める.
この方法によれば0.5~14mgまでのチオシアン酸イオンが定量できる.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry
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