1968 年 17 巻 11 号 p. 1424-1427
ペニシラミンをキレート剤とする塩化フェニル水銀および塩化第二水銀の準化学量論的同位体希釈分析を検討した.試料中に存在する水銀に対して,化学量論的に不足量のペニシラミンを加え,そして生成した水銀キレートと遊離の水銀とがペーパークロマトグラフィーを利用して分離された.展開溶媒としては,イソプロピルアルコール:濃アンモニア:水=7:1:2系が用いられた.展開後,キレート帯域の放射能強度を井戸型シンチレーションカウンターによって測定し,そして標準試料との放射能強度の比から未知試料中の水銀が求められた.本法は操作が簡便で,しかも10-6g程度の水銀を容易に定量することができる.また,本同位体希釈法における他の共存イオンの影響についても検討した.