抄録
イオン選択性電極を検出素子として用いる新しいガスクロマトグラフ用の選択的検出器を開発した.
水素をキャリヤーガスとして試料を分離カラムで分離し,流出成分を白金またはニッケル触媒の存在下で水素化分解する.イオウ化合物より生成する硫化水素および塩素化合物より生成する塩化水素を一定流速で流れている吸収液に吸収させる.吸収液中のイオウイオン濃度の変化は,イオウイオン電極を検出素子とする測定セルによって,塩素イオン濃度の変化は塩素イオン電極を検出素子とする測定セルによって連続的に検出し,この出力を逆対数変換器によってイオウイオン濃度または塩素イオン濃度に比例する信号に変換したのち記録し,イオウ化合物または塩素化合物だけのピークよりなるクロマトグラムを描く.
たとえば,ジメチルジスルフィドについての最小検出量は10-10モルで,10-10~10-7モルの範囲で注入量とピーク面積の間に直線関係が成立した.また,イオウ化合物のモルあたりの感度は他の化合物に比べて約2000倍であり,ほぼ完全な選択的検出が可能であった.