抄録
酸化スズ(IV),酸化アンチモン(III)及び酸化ビスマス(III)の分解法として,ヨウ化アンモニウム融解法の適用を検討し迅速簡便な方法を確立した.すなわちパイレックスガラス製試験管に酸化物試料とヨウ化アンモニウム約2gを入れ,触媒として白金の小片を加えて混合し,冷却管を取り付けた後,バーナーの小さな炎で加熱する.約1分間の加熱で分解は十分であり,スズ(IV),アンチモン(III)及びビスマス(III)はそれぞれのヨウ化物として試料マトリックスから昇華分離し,冷却管中に完全に捕集される.昇華物を2M塩酸で溶解し,溶液中のスズ,アンチモン及びビスマスの量を黒鉛炉原子吸光法で定量する.本法を環境生物試料,鉱石及びたい積物試料中の微量のスズ,アンチモン及びビスマスの定量に応用した.定量値は他の研究者の報告値とよく一致した.