1987 年 36 巻 7 号 p. 412-415
有機試料の低温灰化において,グロー放電領域に試料を置く従来のチャンバー構造では,プラズマ中の電子やイオンなど高エネルギー粒子の作用を受けて,試料中のハロゲン塩などは一部が揮散又はハロゲン酸塩に転化する.直管型のプラズマチャンバーの一端に放電域を設け,非放電の下流に塩化物を含む有機試料を置き灰化したところ,著しい塩化物の回収率の向上と,低い塩素酸塩の生成率が得られた.そこで放電域と近接してステンレス鋼製バスケットを入れたプラズマチャンバーを製作し,バスケット内で灰化を行ったところ,金属網による電界シールド効果によって試料付近にプラズマは発生せず,かつ放電域の電子やイオンは金属表面で中和され,原子状酸素のみによる緩和な灰化が進行し,ほとんど定量的に塩化物が回収できることが分かった.