分析化学
Print ISSN : 0525-1931
黒鉛炉原子吸光法による血清中のリチウムの直接定量
斉 文啓魏 復盛古谷 圭一合志 陽一
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1987 年 36 巻 7 号 p. 416-419

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抄録

生体中のLiの役割が注目されるようになってきた今日,生体試料中のLi量の迅速かつ簡便な定量方法を確立することが重要になってきている.本研究では,血清中のppbレベルのLiを前処理なしに直接黒鉛炉AASにより定量する方法を示した.血清試料に対しては,大量の共存Naの干渉を避けるために2回脱イオン水により4倍希釈を行った.硫酸アンモニウムを添加剤として加えることで,塩素及び他のイオンの干渉を排除した.又,高い灰化温度(900℃)を設定することで血清中の有機物による影響をも取り除いた.測定にはLiの共鳴線670.8nmを,又バックグラウンド補正のためにZr の 670.2nm を用いた.本法を用いると,0.04~30ppb及び30~3000ppbの領域で直線の検量線が得られた.又,過去に報告されている前処理を行う方法に比べて,感度及び信頼性でも優れていることが分かった.更に,実際に健康な人と精神病患者の血清試料を分析し,Li濃度が精神疾患に対応して減少していることを示した.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry
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