1960 年 9 巻 1 号 p. 8-12
青紫色のジフェニルカルバチッド水銀紙は中性ないしアルカリ性でシアンイオンによって赤色を呈する.試料をミクロガス発生器にとり重炭酸ナトリウムを加えて加熱し,発生するガスを水酸化ナトリウム溶液で湿した試験紙に接触させると,シアンイオンの存在で試験紙が赤変し0.05γのシアンイオンまで検出することができた.硫化物は類似の反応を呈するが硝酸カドミウムを加えるとその障害が除去できた.またこの試験紙の変色した部分の長さはシアンイオンの量に比例し,その長さをはかることにより簡易に1~10γのシアンイオンを定量することができた.本定量法は硫化物,フェリシアン化物,ヨウ化物の共存で誤差を生じたが前二者は硝酸カドミウムの添加によって後者は蒸留によって障害を除くことができた.また本法は裁判化学的な試料についても実施することができた.