Print ISSN : 0016-450X
肝癌生成物質投与ダイコクネズミ肝のハロゲン化脂肪酸アミドの脱アミノ酵素について
岸 三二春野 勝彦浅野 文一
著者情報
ジャーナル フリー

1954 年 45 巻 1 号 p. 59-66

詳細
抄録

われわれは発癌過程における肝酵素作用の変調の追究をつづけている。基質として用いる化学的物質のC-N結合を開く酵素に属するアミダーゼを調べているが, ここにハロゲン化低級脂肪酸アミドの11種を合成しうち8種について得た結果を報告する。
ダイコクネズミに肝癌生成物質バクーエロー, アセチールアミノフルオレンをそれぞれ経口投与し一定期間後その肝性組織を採り, 水均質液を作り酵素液とした。これに基質としてハロゲン化脂肪酸アミドの水溶液を加え, 燐酸緩衝液とともに孵卵器中に保存, 一定時間内に脱アミノ化されて生じたアンモニアをフォリン氏法によつて定量し, この種の酵素の活性度とした。
正常肝は上記基質をよく分解する。発癌剤投与中の動物は活性度は低いが, 投与を中絶して正常食に戻したネズミの肝では, 病変肝でも活性度はかなり高く, 軽度の病変では正常よりかえつて高いことがある。しかしすでに肝癌になつている部の活性度は極わめて低い。なお基質とした同族列はみな同一傾向の結果を示した。しかも既報のアスパラギナーゼの場合と酷似している。
この種のハロゲン化脂肪酸アミドの脱アミノ酵素か動物組織中に存在することは文献に見当らない。使用した基質のうち炭素原子数の多いノルマル脂肪酸誘導体はイソや, より低級脂肪酸誘導体より顕著にネズミ肝均質液により脱アミノ化される傾向がみられる。

著者関連情報
© 日本癌学会
前の記事 次の記事
feedback
Top