Print ISSN : 0016-450X
肝癌生成過程にをけるダイコクネズミの肝コリンオキシダーゼについて
浅野 文一
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1955 年 46 巻 1 号 p. 41-46

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抄録

発癌剤を長期間投与し投与を中絶してから正常食に戻してなお長期間飼育をつづけたダイコクネズミの肝を材料とした。また一方投与実験初期でしかも投与継続中のダイコクネズミ肝を材料とした。
肝性組織均質液, コリン塩酸塩水溶液(基質), 燐酸緩衝液(pH 7.5)の混合液を38°Cにをいて検圧計で測定しOO2でコリンオキシダーゼ活性度を表示した。
病変肝で発癌にいたらないものは活性度は正常値とさして遜色ない程度である, そして硬変肝ではやや低下の傾向がある。肝癌自体の活性度は顕著に減少している。なお発癌剤投与開始3-4週でしかも投与継続中のネズミ肝-肉眼的には病変は認められない-では著明に低下している。これらの結果から Woodward (1951) の報告を考えてみると彼の使用した動物の肝は常に発癌剤の作用下にあったことを思わせる。発癌剤自体の投与中絶えず実験動物の肝に惹起しつつあると考えられる毒作用と, その結果として現われた肝の病変とを区別して考えるべきである。

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