Print ISSN : 0016-450X
腹水肝癌の誘導効果
川上 泉
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1958 年 49 巻 3 号 p. 177-192

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抄録

シロネズミの正常肝組織をイモリの嚢胚の予定外胚葉に作用させると原脳的構造を誘導する。この実験では, 同種の腹水肝癌結節 (AH 7974, AH 130) を誘導原に用い, 癌性化することにより誘導効果が如何に変化するかを見た。1) 正常肝組織は原脳的誘導を含む70%の神経性の誘導を起した。両肝癌結節では誘導率は極めて低い。(3~39%) 両種肝癌に差異は認められなかった。2) 予備的実験で, 0.14M NaClで結節から抽出した粗核蛋白質に強い誘導能が見られたところから, 肝癌細胞は誘導能を内包するが, 細胞膜にその誘導作用を防げる如き病理変化があるように思われる。3) これらの肝癌結節で, しばしば, 背索の誘導が見られた。正常肝細胞の原脳誘導性が癌性化により中胚葉誘導の効果を帯びるようになると考えられる。

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© 日本癌学会
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