Print ISSN : 0016-450X
ラッテ肝超生切片による分解に対する星細胞封鎖の影響
伊東 信行
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1958 年 49 巻 3 号 p. 193-198

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抄録

p-dimethylaminoazobenzene (DAB) の発癌過程における星細胞の態度を追求するために, 肝超生切片によるDAB分解に対する星細胞封鎖の影響を検索した。
すなわち, 体重100~200gのラツテの腹腔内に, 生理的食塩水による3%墨汁, 1%トリパン青, 1%コンゴー赤の注射群および3%墨汁と0.08%カルミンとの重複注射群の4群を作り各々10cc/kg体重で使用, 一定時間後 (3~48時間) に屠殺, 200mgの肝超生切片を作り, 20ccのDAB飽和の Krebs-Ringer 氏液に浮遊させ, O2-Gasの存在のもとで37.5°Cの恒温槽内で30分間振盪後, 直ちに100°C加熱, 酵素活性の停止をなし, 25%塩酸アルコール2ccを添加, 発色により濃度を測定した。同時に, 肝組織を Formalin, Susa 固定などを行い星細胞封鎖の程度を組織学的に検索し, DAB分解能との関係を比較追求した。
その結果, 各封鎖物質の種類によりDABの分解能に異った影響をおよぼす。その影響は何れも注射後18時間以内に著明である。星細胞封鎖によるDAB分解能への影響は時間の経過と共に動揺を示し, 漸次正常に複する傾向を示す。
組織学的には墨汁の場合, 星細胞封鎖の程度の強い時, DAB分解能の抑制も強い傾向を示すが, カルミンとの重複注射群では逆の傾向がみられる。すなわち, 何れの場合も肝超生切片によるDAB分解に対する星細胞封鎖の効果は, 封鎖物質の種類と時間の経過により変動し, 一様ではないが, 全般には抑制的である事を明かにした。

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© 日本癌学会
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