抄録
職場のストレスによって精神疾患を患い,長期の病気休業を経験した職業人の在りようは様々であり,心
理的支援を行う上では,病休を個別の体験として理解する視点が不可欠である。本研究では,休職から職
場復帰ならびに回復プロセスの背後にある職業人の体験の具体的様相と本質を探索することを目的として,
精神疾患を患った長期病休経験者5 名を対象に半構造化面接による個別調査を行い,収集したデータに対し
て,解釈的現象学的分析による再分析を行った。その結果,①解放される自己,②否定される自己,③問い
つづける自己,④「病休前の自己」を抱える自己の4つのテーマを抽出した。病休者によって生きられる自
己は多様かつ多層的であり,これらは段階的に生じるのではなく,互いに関与し合う位相として同時に存在
していることが明らかになった。病休とは,病休前の自己をめぐり,職業人によって心理的苦悩や葛藤が生
きられる経験である。それは働き方の再構築や病休の意味づけを行う過程においても解消されず,変化を迫
られる自己に対して絶えず自問が繰り返される。本稿では,職業人の再適応やキャリア発達を促す支援にお
いても,病休を職業人によって生きられた経験として捉えるという,実存的な水準から支える関わりの重要
性を示した。