キャリア・カウンセリング研究
Online ISSN : 2436-4088
25 巻, 2 号
キャリア・カウンセリング研究
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 女性営業職を対象とした研究
    太田 彩子, 岡田 昌毅
    2024 年 25 巻 2 号 p. 31-42
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー
    本研究では,リフレクションがもたらす成果がキャリア継続,すなわち「キャリア・パースペクティブ」 および「情緒的職業コミットメント」に及ぼす影響を検討することを目的とした。女性営業職436名を対象 にインターネット調査を実施した。まず,リフレクションがもたらす成果については「仕事の捉え直し」「危 機意識の高まり」「新たな職業観の獲得」「仲間からの発奮」「やりがいの再認識」の5因子が抽出された。つ ぎに,リフレクションがもたらす成果ならびにその交互作用が「キャリア・パースペクティブ」および「情 緒的職業コミットメント」に及ぼす影響を検討するために,階層的重回帰分析を実施した。その結果,「危 機意識の高まり」は負の影響を及ぼしていた。主効果では「仲間からの発奮」は影響を及ぼしていなかった が,交互作用項を用いることで「キャリア・パースペクティブ」および「情緒的職業コミットメント」に影響 を及ぼしていた。リフレクションがもたらす成果の交互作用は,成果の性質の違い,ならびにその組み合わ せによって異なる影響を及ぼすことが確認された。
資料
  • 道谷 里英
    2024 年 25 巻 2 号 p. 43-54
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー
    職場において仕事に関連する支援を求めること(援助要請)の研究が近年注目されている。本研究は,企 業や団体で働く若年就業者を対象として,職場における自律的な援助要請行動が獲得されるプロセスを明 らかにすることを目的として実施された。若年就業者13名に対して半構造化面接を行い,対象者の逐語記 録をM-GTAにより分析した結果,43 概念,15 カテゴリー,6 カテゴリーグループが生成された。その結果, 自律的な援助要請行動を獲得するまでに3つの段階(援助者への全面依存,自発的な援助要請,柔軟・適切 な援助要請)があることが明らかになった。依存的な援助要請に影響する要因として,相談へのハードルや 自己完結への焦りが見出された。援助要請における自律性を高める要因として,自分を出せる関係性や相談 の意義が実感できることが確認された。組織社会化が援助要請の質の変化に影響することも確認された。相 互に助け合う職場環境を構築することの重要性について議論された。
  • 従業員300名以上の会社の管理職を対象にした調査
    坂本 真士, 鈴木 雄大, 佐久 浩子, 村中 昌紀
    2024 年 25 巻 2 号 p. 55-65
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー
    本研究では,新タイプ抑うつの素因とされる対人過敏傾向(IS)・自己優先志向(PS)は,対人苦手意識に 正の影響を与えており,この影響の一部はサーバント・リーダーシップ(SLS)によって媒介されるという 仮説を,相関分析と媒介分析を用いて検証した。この仮説を検証するため,従業員 300 名以上の会社に勤め る管理職社員男女各100 名(平均年齢49.32 歳,SD = 7.33 歳:範囲28-59 歳)を対象に,インターネットを用 いて質問紙調査を行った。その結果,女性管理職社員においては,IS とPSの合計点は,SLS得点との間に 有意な相関がなく,上記の仮説を検証できなかった。一方,男性管理職社員では,相関分析と媒介分析の結 果,IS とPSの合計点,SLS得点,対人苦手意識得点との間に仮説通りの結果が得られた。仮説が男性管理 職社員には当てはまり,女性管理職社員には当てはまらなかったことについて考察された。
  • 解釈的現象学的視点から見えてくる自己の様相
    野田 実希, 辻本 浩, 阪上 優
    2024 年 25 巻 2 号 p. 66-77
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー
    職場のストレスによって精神疾患を患い,長期の病気休業を経験した職業人の在りようは様々であり,心 理的支援を行う上では,病休を個別の体験として理解する視点が不可欠である。本研究では,休職から職 場復帰ならびに回復プロセスの背後にある職業人の体験の具体的様相と本質を探索することを目的として, 精神疾患を患った長期病休経験者5 名を対象に半構造化面接による個別調査を行い,収集したデータに対し て,解釈的現象学的分析による再分析を行った。その結果,①解放される自己,②否定される自己,③問い つづける自己,④「病休前の自己」を抱える自己の4つのテーマを抽出した。病休者によって生きられる自 己は多様かつ多層的であり,これらは段階的に生じるのではなく,互いに関与し合う位相として同時に存在 していることが明らかになった。病休とは,病休前の自己をめぐり,職業人によって心理的苦悩や葛藤が生 きられる経験である。それは働き方の再構築や病休の意味づけを行う過程においても解消されず,変化を迫 られる自己に対して絶えず自問が繰り返される。本稿では,職業人の再適応やキャリア発達を促す支援にお いても,病休を職業人によって生きられた経験として捉えるという,実存的な水準から支える関わりの重要 性を示した。
  • 赤城 知里, 井上 忠典, 西村 昭徳
    2024 年 25 巻 2 号 p. 78-89
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー
    本研究では,就職活動時の職業選択志向性によって,就職後の職務満足感に差異が見られるのか,さら に,境遇活用スキルが職業選択志向性と職務満足感との関連にどう影響するのかを明らかにすることを目 的とした。大学卒で22 ~ 30歳の社会人290名を対象として,職業選択志向性尺度,境遇活用スキル尺度, 職務満足感尺度で構成される調査票を作成し,Web調査を実施した。職業選択志向性尺度については,「と りあえず志向」と「やりたいこと志向」からなる24項目を作成した。因子分析の結果,職業選択志向性尺度 は,「とりあえず志向」,「やりたいこと志向」の2 因子での解釈が妥当と判断された。尺度の信頼性を検討し たところ,α 係数,I-T相関から十分な内的整合性が考えられた。相関分析,回帰分析の結果から,「とりあ えず志向」は職務満足感と負の関連を示し,「やりたいこと志向」は職務満足感と正の関連を示した。さら に,職業選択志向性と職務満足感の関連における境遇活用スキルの調整効果を検証した結果,「とりあえず 志向」においてのみ職業選択志向性と境遇活用スキルの有意な交互作用が確認され,境遇活用スキルの調整 効果が示された。本調査の結果を踏まえ,「とりあえず志向」を低くするとともに,境遇活用スキルを高め るプログラムを開発する必要性が示唆された。
事例研究
  • A大学におけるリカレント教育プログラム事例を通した探索的検討
    原 恵子, 廣田 奈穂美, 大川 一郎, 岡田 昌毅
    2024 年 25 巻 2 号 p. 90-100
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー
    本研究は,就労支援付きリカレント教育プログラムでのキャリア支援を,A大学での実施事例を通して探 索的に検討することを目的とする。就労支援付きリカレント教育としての特徴的な要素や効果的な体制作 りや支援方法について整理をすることで,今後の就労支援やリカレント教育への応用やキャリア支援者の 資質向上に資する示唆を得る。研究対象とする事例は,A大学が主催した令和2年度文部科学省受託事業で の就労支援プログラム(2021年10月~2022 年1月実施)であり,集合研修と個別支援で構成されていた。個 別支援を担当したキャリア支援者6名に対しプログラム実施前・中間・実施後の3回半構造化面接を実施し た。プログラム実施後の面接結果(2022 年2月実施)を分析対象とし,KJ法(川喜田,1967)を援用し分析し た。就労支援付きリカレント教育におけるキャリア支援に関する98項目が抽出され,34小分類・9中分類・ 4大分類として整理された。大分類は「Ⅰ.本プログラムでの特徴的な要素(3小分類)」「Ⅱ .体制作りと連携 (6小分類・2中分類)」「Ⅲ.支援全般(15小分類・5中分類)」「Ⅳ.就労支援(10 小分類・2中分類)」であった。 分類結果に基づき,就労支援付きリカレント教育でのキャリア支援に関する空間配置図が作成された。
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