抄録
脳虚血後には種々の分子シグナリングの経路が活性化されるが,虚血の程度が強い場合には,アポトーシス関連経路が活性化されることになる.アポトーシス関連経路においてはp53 が重要な役割を果たし,転写依存的に多数のアポトーシス関連分子を活性化し,その結果としてBcl-2 ファミリーメンバーの相互作用を介してミトコンドリア膜間腔に存在するcytochrome c やapoptosis-inducing factor などが放出される.その後にcaspase-9,caspase-3 の活性化が続きアポトーシスを誘導するが,この「放出」のステップが不可逆的であるために,ここが細胞死を決定づける段階であると考えられている.本稿では,このステップを制御すると考えられるp53 依存性の分子とBcl-2 ファミリーのタンパクとの相互作用の中から,我々のグループが研究を重ねたBax, PUMA, PIDD を中心に概説する.