2003 年 3 巻 2 号 p. 86-95
我々は、遺伝性クロイツフェルト・ヤコブ病に代表的な200番目のアミノ酸変異に着目し、ヒトプリオンタンパク質の分子動力学計算を行った。本研究は、3種類のプリオンタンパク質のモデル構造を用いて行った。モデル1はNMRにより決定された構造であり、3つのαへリックスと1つの逆平行βシートから構成されている球状ドメインである。モデル2と3は、モデル1の構造にGlu200→AspとGlu200→Lys(クロイツフェルト・ヤコブ病に関連)のアミノ酸置換を行う構造である。計算の結果、モデル1と2の構造は安定に保持されていた。一方、モデル3の構造において、Glu200→Lysのアミノ酸置換に起因するタンパク質の部分的な構造の崩壊が観察された。