2024 年 20 巻 p. 2-17
性別職域分離研究では、その構造の不均衡な変化を捉えることが近年の研究課題である。そうした中、サーベイ実験を用いた採用担当者に対する調査では、個人の生産性と別に応募者の性別が職業適性評価に影響するか分析することで、ジェンダーステレオタイプの存在を解明しようとしてきた。ここでの知見に基づき、本稿では一般大衆を調査対象として、職業適性評価における性差を検討した。架空の人物のプロフィールを回答者に提示し、ヴィネットカードに書かれた性別によって職業適性評価が異なるのか分析を行った。その結果、男性比率の高い男性占有専門職ではヴィネットの性別による評価の違いはないが、同じく男性比率の高い男性占有ブルーカラー職、男性占有保安職では、女性回答者が女性ヴィネットを過小評価し、また女性占有職では、男性回答者が男性ヴィネットを過小評価していた。これらの結果、性別職域分離が弱まっている職域である男性占有専門職ではジェンダーステレオタイプな評価が減じていることが示唆される。