抄録
近年,農業分野において生産性向上と生物の生息環境の保全の兼ね合いが関心を集めている。本研究は,消費者のリスク選好・時間選好に着目し,それらが両者の兼ね合いに対する消費者意識に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。本研究では大学生を対象に確率付きクジを用いた経済実験を行い,被験者のリスク選好・時間選好に関するデータを入手した。さらにアンケート調査により被験者の個人属性を把握し,それら諸要因と農業のあり方に対する消費者意識との関係を検証した。時間選好およびリスク回避度と被験者の保全意識の間に有意な関係は見出されなかった一方,損失回避度と保全意識の間には正の相関が見出された。即ち,損失回避的な主体ほど農業の生産性向上よりもそれにより引き起こされる環境劣化に対して回避的な態度を示すことが分かった。