抄録
本研究では、3次元CADのプラットフォームであるカーネルを提供する企業の事例研究を通して、二面性のある市場(two-sided-market)におけるプラットフォーム提供企業のドメイン戦略について考察する。自社のカーネルをローエンドのCADに普及させることによって自社のハイエンドCAD製品の便益を高めることを目指した垂直統合企業は、実際にはローエンドCADの性能向上により、自社のCAD製品の拡販に十分にはつなげることができなかった。このことは、プラットフォームが破壊的技術の性質を持つとき、プラットフォーム提供企業が垂直統合によってサイド間ネットワーク効果から十分な利益を得られなくなるリスクを示唆している。